採用から退職までの諸問題Q&A

採用から退職までの労働基準法や人事労務諸問題に答えます。
(平成23年1月現在)

1. 会社では、採用者にはどのような手順で通知を行ったらよいでしょうか。

会社が採用予定者に面接・筆記・適性試験を行った結果、採用と決定した後は、通常は採用者に採用通知書をもって通知しますが、急ぐときは口頭あるいは電話で通知しても構いません。相手がそれを承諾したならば、労働(雇用)契約が成立したことになります。労働(雇用)契約とは、雇用される者と使用者(会社)の間で一方が相手に対して労働に服務することを約束し、相手側がこれを約束する契約です。

2. 労働(雇用)契約とはどのような内容でしょうか。

労働(雇用)契約は、採用内定により成立し、内定者は通常試用期間を経過して本採用となります。採用する際には、使用者は労働条件(労働基準法15条、規則5条)のほか、労働契約期間について定めること(労働基準法14条)などが義務付けられています。

(1)労働条件明示の内容
労働条件は一般的に雇入れ通知書などで明示して、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりませんが、その労働条件の内容は、次のようになっています(労働基準法15条、規則5条)。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  3. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇及び労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
  4. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期に関する事項
  5. 退職に関する事項
  6. 昇給に関する事項
  7. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法ならびに支払の時期に関する事項
  8. 臨時に支払われる賃金等及び最低賃金に関する事項
  9. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  10. 安全及び衛生に関する事項
  11. 職業訓練に関する事項
  12. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  13. 表彰及び制裁に関する事項
  14. 休職に関する事項

(2)労働条件明示の説明
前号のうち7~14の事項は、これらに関する規定が設けられている場合は、明示しなければなりませんが、特に定めがない場合はその限りではありません。また、1~5に関する事項は書面による明示が必要ですが、その他の事項は、就業規則などを提示して読んで頂くとさらに有効です。
注意しなければならないのは、この契約はいちいち書面にしなくても口頭や、電話などの約束だけで効力を発揮するということです。
たとえば主婦がパート募集の広告を見て、会社に働きたいと申し込み、会社が承諾しますと、互いに顔を見なくても労働契約が成立したことになります。翌日その主婦が出勤の途中、交通事故で怪我をしたとすると、1日も働いていなくても通勤途上事故として労災保険の対象となります。

3. 労働契約期間の定めとはどのような内容ですか。

労働契約期間は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの他には3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない(労働基準法14条)と定められています。

(1)高度専門業務従事者
専門的な知識、技術又は経験(以下、この号において、「専門知識等」という。)であって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門知識を有する労働者(当該高度の専門知識等を必要とする労務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約をいいます。

1.高度の専門知識を有する者(平成15年厚生労働省告示第356号)

  • ア. 博士の学位、公認会計士、医師、歯科医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、
  •    社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士、弁理士
  • イ. 情報処理の促進に関する法律(第7条)
  •    システムアナリスト、アクチュアリーに関する資格試験に合格した者
  • ウ.特許法に規定する発明者、意匠法に規定する登録意匠を創作した者
  • エ.次のいずれかに該当する者であって、1年当たりの額が、
    • 1,075万円以上の者で大学卒業後5年、短大・専門学校卒業後6年、高校卒業後7年以上の実務経験者
      • 科学技術・機械・電気・土木・建設技術者
      • システムエンジニア
      • 各種デザイナー
  • オ.その他(情報処理システムの活用するための考案・助言の業務従事者
  •    国・地方公共団体・公益法人等に有する者で厚生労働者労働局が認める者)

(2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約

4. 試用期間とはどんな内容ですか。また、その期間はどのような考え方で労働契約を行ったらよいでしょうか。

試用期間とは社員として採用するにあたって、会社は「一定の期間」を定めてその期間内に本採用予定者の仕事に対する能力や勤務態度を観察し、本採用するか否かを決定する期間をいいます。一般的には3ヵ月ぐらいを試用期間としているケースが多いようです。言い換えると社員の適格性を判断するために試験的に使ってみる期間です。

・試用期間の長さの考え方
試用期間は労働者にとっても試用的な期間です。従って「会社が当社の社員として問題がないと判断したときに正式採用とする」というような就業規則の規定があれば良いが、ないとしたら問題です。これではいつ自分が正式採用の判定があるのか分かりません。このような状況では社員にとって不利益なため、法律的には無効となります。
それでは、どの位の期間であれば試用期間として定めることが許されるのかというと、会社の規模や社員の職種によって一概には言えませんが、1年が限度と考えられています。しかし、一般的には3ヵ月~6ヵ月程度がよいでしょう。

5. 試用期間が経過しても本採用しない場合はどう考えたらよいでしょうか。

採用内定により勤務したが、試用期間が経過しても本採用されないケースがあります。この場合、本採用拒否が法律的に認められるケースとしては勤務成績、仕事の能力、職場での協調性を欠く、経歴詐称などの例があります。

本採用拒否の手続を行うには、第1には、相手側に確実に届くような方法で本採用拒否の通知を送ることです。第2には、試用期間中でも15日以上勤務している場合は解雇予告の適用(労働基準法20条)がありますから、解雇予告(30日前)が必要となり、その日数に不足した場合は、その不足した日数分について平均賃金を支払う必要があります。

6. 社員に対して身元保証書を締結したと思いますが、その際どのようなことに留意したらよいでしょうか。

社員を採用するに当たって社員から使用者に対して提出する書面の一つです。この場合には次のポイントについて留意するとよいでしょう。

1. 身元保証契約は、労働契約に付随して締結されるものであり、社員の使用者に対する債務不履行、不法行為などから生ずる損害賠償債務を身元保証人が担保する契約です。(金銭的賠償契約)
※身元保証人の損害賠償の責任及び金額は、使用者の監督責任、過失の有無や、社員の任務や身上の変化等の事情によりますが、横領、窃盗といった犯罪行為の故意によるものは別として、過失による損害は全額の少なくとも7割から2割(重大な交通事故等)の範囲で認められています。

2. 身元保証契約期間は次のとおりです。
 ・期間を定めていないときは3年間
 ・期間を定めるときは最長5年間
 ・自動更新は無効⇒5年後もさらに継続するときは、新たに身元保証契約を結ぶ。

3. 最近では社員が精神障害等を発症した場合において、本人に認識がなく、家族も非協力的なときは、身元引受人としての保証人の措置を求めるケースがあります。この場合は、「本人の身元を引受け、本人の指導監督に努め、万が一疾病によって会社に損害や迷惑がかかる場合は、賠償及び身柄引取り看護等適切な措置を講ずることを保証する」旨の契約内容の明記が必要です。

7. 労働時間の重要性はわかりますがどのように考えて、そしてその管理をしたらよいでしょうか。また、法定労働時間についても教えて下さい。

平成22年4月から労働基準法が改正されました。現在は、長時間労働が多くみられますので、長時間労働を是正し労働者の健康を確保、仕事と生活の調和のとれた社会の実現を目的としています。

《ポイント》
1. 1ヵ月の時間外労働の時間が60時間を超えた場合の割増賃金率を50%とすること。
2. 代替休暇制度の創設。
3. 限度時間を超えた時間外労働の割増賃金率にかかる努力義務。
4. 時間単位の年次有給休暇の創設。

法定労働時間について説明します。
法定労働時間とは、労基法32条1項に「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」と定め、同条2項で「使用者は1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。」と規定し、1日8時間・1週40時間労働の原則を採用しています。しかし、中小企業における労働時間の実態から直ちに法定労働時間を週40時間とすることは困難であるため、平成14年4月1日より10人未満の労働者を使用者する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業については、特例として1日8時間、1週44時間制が認められています。


8. 8時間の労働時間制とはどのようなことでしょうか。

「1日について8時間」、「1週について40時間」という場合の1日とは、午前零時から午後12時までを指し、1週とは日曜日から土曜日までをいいます。しかし、1日8時間というのは、継続して勤務する8時間の意味です。例えば、午前零時を中央に挟む16時間の隔日勤務は、各暦日についてみれば1日8時間となりますが、継続勤務であるから、8時間労働の制限を超えることになり、変形労働時間制をとらない限り違反となります。

9. 拘束時間、労働時間、所定労働時間、休憩について教えて下さい。

拘束時間、労働時間、所定労働時間、休憩については混乱して理解していることが多いので、表と図にて説明します。

拘束時間、労働時間、所定労働時間、休憩時間の区分

拘束時間
出勤から退勤までの全時間をいい、休憩時間も含まれる。
労働時間
拘束時間から休憩時間を除いた時間をいう。
この労働時間は、使用者の指揮監督のもとにある時間をいい、必ずしも現実に精神や肉体を活動させていることを要件としない。従って、使用者の命令があればいつでも作業ができる状態で待機している時間、手持ち時間は労働時間に含まれる。
始業前の準備、終業後の後始末時間も、使用者の指揮命令下に行われる限り同様である。
所定労働時間
就業規則等で定めた所定始業時刻から所定終業時刻までの時間のうち休憩時刻を除いた時間をいう。
所定労働時間は、変形労働時間制による場合を除き、法定労働時間の範囲内で定めなければならない。
休憩時間
拘束時間内ではあるが、勤務から解放され、労働しないことが保障されている時間をいう。

以上を図にすると、次のようになります。

所定労働時間、拘束時間

10. 1ヵ月単位の変形労働時間制を導入しようと思いますが、どんなことに留意したらよいですか。

1ヵ月単位の変形労働時間制とは、1ヵ月以内の変形期間を定めてその期間の労働時間について通常は、法定労働時間が週40時間、1日8時間が原則のところ、特定の週や特定の日については法定労働時間を超えて働くことを変形労働時間制といいます。こうした変形労働時間制は使用者側だけではなく、労働者側にとっても週休2日制の普及、年間休日日数の増加というメリットをもたらします。

1ヵ月単位の変形労働時間制の導入には、次のような要件を満たさなければなりません。

(1) 就業規則か労使協定の締結が必要です。

  • 使用者は、就業規則等で具体的に定めることによって、労働者に明示することが必要です。

(2) 1ヵ月以内の一定の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない旨を定めることが必要です。
(但し、特例措置対象事業で常時10人未満の事業場では、週所定労働時間は44時間)

  • 1. 変形期間
  • 1ヵ月、4週間、20日、2週間など1ヵ月以内で設定される期間
  • 2. 変形期間の起算日
  • 変形労働時間制がスタートする日のこと
  • 例えば、給与締切日に合わせて設定する場合や1ヵ月であれば暦日に合わせて1日からとするケースがあります。

(3)変形期間内の総法定労働時間
変形期間における法定労働時間の総枠=週法定労働時間×変形期間の暦日数/7

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※特例措置対象事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する商業、理容業、映画・演劇業、保健衛生、接客娯楽業です。

11. 1年単位の変形労働時間制を導入するに当たりどのような要件がありますか。

1年単位の変形労働時間制とは、1ヵ月以上を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として認められている制度です。それは、季節等によって業務に繁閑があるため、労働時間の効率的な配分を行う必要がある場合や、年末年始、夏休みなどのように休日を特定の時期に集中して年間の休日として計画的に配分しようとするときは、便利な制度です。例えば、小売業や、レジャー産業などのように1ヵ月以上半年又は1年以内のサイクルで仕事が忙しくなったり、暇になったりするような業種に活用することをおすすめします。

  • (1)1年単位の変形労働時間制導入のための要件
    • 1年単位の変形労働時間制は、使用者にとっては便利な制度ですが、労働者にとっては問題があります。労基法(32条の4)では、この制度の導入にあたっては、次の要件を満たさなければなりません。
  • 1. 労使の書面協定において次の事項を定め、これを所轄労働基準監督署長に届け出しなければなりません。
  • ア.対象となる労働者の範囲を定めます。
  • イ.変形期間とその起算日を定めます。
  • 変形期間は「1年以内の一定の期間」とされていますから、必ずしも1年である必要はなく、3ヵ月、6ヵ月でもかまいません。
  • ウ.変形期間内の所定労働時間の総枠は、その期間内(3ヵ月、6ヵ月、1年)の期間の1週間当りの平均所定労働時間が40時間を超えないことが必要です

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例)1年の場合
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  • エ.労働時間を特定します。
  • 変形期間の各日、各週の所定労働時間が具体的に特定されていなければならず、使用者の都合で勝手に変更することはできません。
  • 1日の労働時間は10時間以内、1週の労働時間は52時間以内としなければならず、また、いずれの場合でも連続労働日数は6日としなければなりません。
  • なお、変形期間を1ヵ月ごとに区切った場合には、最初の区分期間については「労働日と各労働日の労働時間」を特定しなればなりませんが、それ以降の期間については、労働日数と各区分期間の総労働時間を定めておいて実際にその期間が始まる30日前までに労働者の同意を得て特定することで足ります。(平成11年基発第45号)
  • オ.対象期間の所定労働日数は、原則として1年当たり280日まで(対象期間が6ヵ月の場合は140日というように按分)となります。
  • なお、変形期間を平均して1週間の労働時間を超えて労働させた場合には、割増賃金を支払う必要があります。

12. 会社では、営業職を雇用していますが、その社員に対しみなし労働時間制があると聞きましたがそれはどのようなものですか。

みなし労働時間制とは、職場外において次のケースの場合に認められますので検討して下さい。

1.事業場外労働については、労働者の労働時間管理が便利な制度です。つまり原則として、所定労働時間を労働したものとみなす。しかし、次の3つの要件が必要です。

  • 1)労働者が事業場外で仕事を行っていること
  • 2)使用者の労働者に対する指揮監督が及ばないこと 
  • 3)その結果として、労働者の労働時間を計算することが困難になったこと

以上3つの要件が必要となりますので確認の上で活用して下さい。

ただし、次のケースでは、使用者の指揮監督が及ばない状態とはいえません。

  • ・労働者が随時電話等で連絡をとり指示を受けながら労働しているような場合
  • ・グループで外に出かけて仕事をしているが、そのメンバーの中に労働時間の管理する人がいる場合

《認められるケース》
・ 事業場外労働者(上記3つの要件に合致)
・ 営業の出張
・ 保険の外交セールス

2.労働時間の計算のしかた

事業場外労働の労働時間は、次のように計算します。

  • 就業規則などで決められた労働時間、つまり所定労働時間を労働したとみなします。
  • その業務をするには、通常の所定労働時間(例えば8時間)を超える労働が必要という場合には、所定労働時間以上の労働をしたとみなします。但し、8時間を超える場合は、労使協定し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
  • (則24条の2第3項)

13. 管理者や特殊な業務においては、労働時間、休憩及び休日に関する規則は適用しないと聞いたのですがそれはどのような社員でしょうか。

監督・管理者又は機密の事務を取り扱う者、監視又は断続的労働に従事する者については、労働時間、休憩及び休日に関する労基法の規定は適用しないとされています(労基法41条)。

  • (1)管理・監督の地位にある者
  • 一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意味であるが、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものであると行政解釈が示されています(昭和63年基発150号)。
  • また、最近の判例も該当性を認められるケースやまた、認められないケースも多数見受けられます。
  • (2)機密の事務を取り扱う者
  • 秘書その他の職務が経営者又は監督もしくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳粛な労働時間管理になじまない者をいう(昭和22年発基17号)。
  • (3)監視又は断続的な労働に従事する者
  1. 監視労働とは、原則として一定の部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない労働のことである。
  2. 断続的労働とは、休憩時間は少ないが、手持ち時間の多い労働のことである、作業自体が断続的に行われる労働をいう。

しかし、両者とも、使用者の主観的な判断にまかせることは妥当ではないので、適用除外については、所轄労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。

14. 労働基準法では時間外や休日労働の場合にどのような協定を労使間で締結しないといけないでしょうか。

労働基準法では、災害の発生や業務の繁忙の場合に法定労働時間外の労働や休日労働が例外的に労使間で協定を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出ることによって、労働時間を超えて、又は休日に労働させることができます。

  • (1)非常災害の場合
  • 災害、その他の原因によって通常発生することが予測できない事由によって、臨時に時間外や休日に労働させることが必要となった場合は、その必要限度までにおいて労働させることができる。(労働基準法33条)
  • この場合には、あらかじめ、所轄労働基準監督署長の許可を受けるか、又は、事態が急迫していて事前に許可を受ける時間的余裕がないときは、事後に遅滞なくの「届出」ですることで差し支えない。
  • (2)労使の協定による場合
  • 使用者が労働者代表と書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合には、労働時間の規制枠を超えて、労働者に時間外労働を行わせ、又は休日に労働させることができる(労働基準法36条)
  • ただし、18歳未満の年少者については、この協定によって時間外労働、休日労働とも行わせることはできない(労働基準法60条1項)。
  • 36協定の締結、届出についての留意すべき事項
  • ア.労働者代表
    • その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合の代表者、労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表するものです。ただし、管理・監督の地位にある者は、協定締結の際に労働者代表としては適格ではありません。
  • イ.時間外労働時間
    • 36協定において1回の時間外労働時間は、有害業務の場合は2時間となっています。それ以外は、次のようになりました。また、1年単位の変形労働時間制の場合は、異なります。

期間
限度時間
1年単位の変形労働時間制
1週間
15時間
14時間
2週間
27時間
25時間
4週間
43時間
40時間
1ヶ月
45時間
42時間
2ヶ月
81時間
75時間
3ヶ月
120時間
110時間
1年間
360時間
320時間

  • ウ.有効期間
    • 36協定の有効期間については、「一定期間」において協定する関係で、最も長い場合でも1年間となっています。なお、1年間の有効期間とは別に、1週間、4週間、1ヵ月、3ヵ月等の1年未満の有効期間を定めることも差し支えありません。

15. 労働者の休憩時間とはどのようなことをいいますか。また、どれだけの時間を与えないといけませんか。

休憩とは、労働者が使用者の指揮命令(拘束)下に置かれていないことをいいます。1日の労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には1時間の休憩時間を使用者は労働者に対して、労働時間の途中に与えなければなりません。休憩時間は、賃金の計算の対象外となっています。(労働基準法第34条1項)

16. 休日とはどのような制度でしょうか。また、休日を振替したときは賃金についてはどのように支払ったらよいでしょうか。

休日とは次の様な判断をします。

  • (1)週休制の原則
    • 休日は、原則として毎週少なくとも1回与えなければなりません(労働基準法35条)。また1週間に1回であれば、何曜日を休日としてもよいが、週休制の建前から一定の日に特定しておくことが望ましい。
  • (2)変形休日制
    • 週休制をとることが難しい場合には、4週間に4日以上の休日を与えれば週休制の原則によらなくても差し支えありません。これを変形休日制という(労働基準法35条2項)。     
  • (3)休日の振替と代休
    • 定められた休日とこれに近接したほかの労働日とを事前に入れ替え、休日として特定さている日を労働日とし、その代わりに指定した労働日を休日とする「休日の振替」が行われることがあります。この場合には、当然週休制(1週1日ないし4週4日)に反しないことが必要です。振替が有効に行われたときには、当該休日が労働日となるから、休日に労働させたことにならない。しかし、休日を振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間は時間外労働となるから、時間外労働の手続ならび割増賃金の支払いが必要となります。
    • これに対し、休日労働や長時間労働、深夜労働を行なわせた後で、代償措置として業務の閑散な時期、あるいは労働者の希望する日の労働義務を免除する制度を一般に「代休」と呼んでいます。しかし現に行われた休日労働や長期間労働が、代休を与えることによって帳消しにされるものではないから、休日労働や時間外労働の手続ならびに割増賃金の支払いが必要です。

17. 年次有給休暇についてはどのような制度でしょうか。

労働基準法では、休憩、休日のほかに、労働者に休養を与える制度として、年次有給休暇の制度を設けています。

  • (1)年次有給休暇の発生要件
    • 1. 6ヵ月間継続勤務
    • 2. 全労働日(所定労働日)の8割以上出勤すること
    • これは、雇い入れ後の最初の付与が6ヵ月の継続勤務後(8割勤務)ということであり、2回目以降の付与日は雇い入れてから1年6ヵ月後、2年6ヵ月勤務後、3年6ヵ月後と1年きざみとなっています。
    • 8割出勤の計算については、業務上の傷病により休業した期間及び産前産後の休業期間、育児・介護休業法2条の育児・介護休業期間は、これを出勤したものとして取扱います。
    • 1日の労働時間が短く、パートタイマーとして取り扱われている労働者であっても、6ヵ月間継続勤務し、かつ所定労働日数が週5日以上である者には、一般労働者と同日数を与えなければなりません。
  • (2)年次有給休暇の日数
  • (1)の要件を満たした労働者には、法定日数の年次有給休暇を与えなければならないが、年次有給休暇の日数は、6ヵ月間経過後の最初の付与以降勤務が1年増すごとに1日ずつ加算して与えます。休暇日数が20日に達した以降は20日を限度として差し支えない。

勤続年数
6ヵ月
1年6ヶ月
2年6ヵ月
3年6ヵ月
4年6ヵ月
5年6ヵ月
6年6ヵ月以上
付与日数
10日
11日
12日
14日
16日
18日
20日

18. パートタイマーに対しての年次有給休暇はどのようになっていますか。

パートタイマー等に対しても、6ヵ月間継続勤務し、全労働日(当該パートタイマーの所定労働日)の8割以上出勤した場合には、年次有給休暇を与えなければならないことは既に述べましたが、所定労働日数の少ないパートタイマー等については、その所定労働日数に比例した日数の年次有給休暇を与えなければなりません。

年次有給休暇の比例付与の対象となる労働者は、次のア又はイのいずれかに該当する労働者です。

  • ア.1週間の所定労働日数が4日以下の労働者。
  • イ.週以外の期間によって所定労働日数が定められている労働者については、1年間の所定労働日数が216日以下の労働者。ただし、ア又はイに該当する場合であっても、1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者については、原則どおりの日数の年次有給休暇を与えなければなりません。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
4日
169~216日
7日
8日
9日
10日
12日
13日
15日
3日
121~168日
5日
6日
6日
8日
9日
10日
11日
2日
73~120日
3日
4日
4日
5日
6日
6日
7日
1日
48~72日
1日
2日
2日
2日
3日
3日
3日

19. 年次有給休暇が時間単位で与えることができるようになったと聞きましたが、どのような内容ですか。また、就業規則及び労使協定の例がありましたら教えて下さい。

年次有給休暇を時間単位で与えることが平成22年4月よりできるようになりました。年次有給休暇の日数のうち最大5日以上については、労使協定で定めることにより、時間を単位として与えることができることになりました。就業規則の例と、時間単位年次有給休暇の協定の見本は以下のとおりですので、参考にしてください。(労働基準法第39条4項)

規定(例)   就業規則第○条
― 前項は省略 ―
(5)労使協定を定める場合は、時間単位の年次有給休暇を付与する。また、時間単位を付与する対象者、その他は労使協定による。
(6)社員は、年次有給休暇を取得しようとするときは、予め時季を指定して請求するものとする。但し、会社は事業の正常な運営に支障があるときは、社員の指定した時季を変更することがある。
― 以下は省略 ―

                    時間単位年次有給休暇の協定
(株)○○と社員代表●●は、労働基準法第39条の規定に基づき、時間単位年次有給休暇について、下記のとおり協定する。
                           記
1.本協定の適用対象者とは、当社に勤務する全ての労働者を対象とする。
2.年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数の上限は、年間5日以内とする。
3.年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日分の年次有給休暇に相当する時間数を8時間として計上する。
4.年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1時間単位とする。
5.本協定の有効期間は平成22年○月○日から平成23年3月31日までとする。
但し、有効期間が満了となって労使から異議の申出がない場合はさらに1年間継続する。

以下、同様とする。
6.本協定に定める事項について変更する必要が生じた場合は、1ヵ月前までに協議を行い、変更を行うものとする。

以下省略

20. 産前産後休業の制度とはどのような制度ですか。

産前産後休業とは次のことをいいます。

  • 1. 産前休業
    • 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合には、その女性を就業させてはならない(労働基準法65条第1項)。
  • 2. 産後休業
    • 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない(労働基準法65条第2項)。

出産とは、妊娠4ヵ月以上の分娩をいうので、妊娠4ヵ月以上の分娩の場合には産後休業を与える必要があります。
産前休業は女性の請求が要件となっているが、産後休業は女性の請求の有無にかかわらず、就業させてはなりません。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合で、医師が支障ないと認めた業務に就かせることは差し支えありません。
産前休業、産後休業とも必ずしも有給とする必要はなく、就業規則等で定めるところによります。

なお、健康保険においては産前産後休業期間中1日につき標準報酬の日額の3分の2に相当する出産手当金が支給されます(健康保険法102・103条)。

21. 育児・介護休業法の改正があったと聞きましたが、それはどのような内容ですか。

育児・介護休業法は、平成21年6月の改正と平成22年6月30日に改正しています。主な内容を整理すると次のとおりです。

※下線部は、平成21年6月の法改正により改正された部分。
施行日:原則として平成22年6月30日(但し、4、5、6、については100人以下の企業は平成24年6月30日予定)

  • 1.育児休業制度
    • 労働者(日々雇用される者を除く。以下同じ。)は、その事業主に申し出ることにより、子が1歳に達するまで(両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヵ月に達するまでの間に1年間)の間(子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合には、子が1歳6ヵ月に達するまで)、育児休業をすることができる。
    • ※ 育児休業については、次のいずれにも該当する有期契約労働者も対象
    • 1. 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
    • 2. 子が1歳に達する日を超えて引続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者を除く)
  • 2.介護休業制度
    • 労働者は、その事業主に申し出ることにより、対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態に至るごとに1回、通算して93日まで、介護休業をすることができる。
    • ※ 介護休業についても同様の考え方で有期契約労働者も対象
  • 3.子の看護休暇制度
    • 小学校入学までの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、小学校就学前の子が1人であれば年に5日間まで、2人以上であれば年10日間まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができる。
  • 4.介護休暇制度
    • 要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日間まで、2人以上であれば年10日間まで、介護のために、休暇を取得することができる。
  • 5.短時間勤務等の措置
    • (1)事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていない者について、労働者の申し出に基づく短時間勤務の措置を講じなければならない。
    • (2)事業主は、常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者で介護休業をしていない者について、次のいずれかの措置を講じなければならない。
    • 短時間勤務制度、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ、介護費用の援助措置。
  • 6.所定外労働の免除
    • 事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
  • 7.時間外労働の制限
    • 事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合は、1ヵ月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない。
  • 8.深夜業の制限
    • 事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合は、深夜(22:00~5:00)において労働させてはならない。
  • 9.不利益取扱いの禁止
    • 事業主は、労働者が上記1~8の申し出をしたこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
  • 10.転勤についての配慮
    • 事業主は、労働者の転勤については、その育児又は介護の状況に配慮しなければならない。

出所)厚生労働省(改正育児・介護休業法のあらまし P.12)

22. 賃金管理はどのようなことに留意することが必要ですか。

労働者のモラールは、様々な要因によって形成されますが、中でも重要な要因となるのが「賃金」です。
賃金管理の上で、各々の企業において産業形態や雇用形態の多様化に対応した賃金の支払いが必要となります。
企業側としてコストからみた賃金がベストであったとしても、労働者側にとっては満足する賃金制度を整備するニーズが高くなり、モラールを維持し、労働者が意欲的に生活を送れる賃金水準の維持や企業からみた賃金総額管理(総人件費)も大きな要件となります。
賃金管理の内容は、使用者が労働者に労働の対価として支払う金銭を賃金、又は給料といい、一般に「企業が支払うべき賃金の額と制度について、これを労働管理の一環として合理的に計画し、実施の結果を監査し改善することによって、労務管理の目的達成に役立てようとする管理の意味である」といえます。つまり労働者の生活の維持・向上を考慮しつつ、賃金の支払いを経営の側面から合理的に管理することです。

23. 賃金管理の具体的な内容はどのようなことがありますか。

賃金管理の目的を達成するための領域として、賃金総額管理(総人件費管理)、賃金水準管理、賃金制度等があります。

1.賃金総額管理とは、使用者が労働者に対して支払う賃金(人件費)の総額管理をいいます。そこで賃金とは、どんな内容があるかを捉えておかなければなりません。賃金(人件費)の中には直接労働者に支払う給料や手当のほかに、企業が負担しなければならない社会・労働保険料などの法定福利費があります。労働者のための法定外の福利厚生費、さらに労働者を採用する場合の募集費、採用後の労働者の研修、教育費まで含まれます。

2.賃金水準とは、労働者1人あたりの賃金額で表わし、企業全体の賃金水準を管理することが賃金水準管理です。

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賃金の水準は、労働生産性の向上のほかに、商品単価の引き上げ、労務費比率の引上げのどちらか一方、あるいは双方によって上昇が可能です。
労働生産性を向上させる方法としては、労働者を量的に管理する方法(省力化・定員管理・定着化・組織管理など)労働者を質的に向上させる方法(社員教育訓練・適正配置・経営意識向上など)、設備や付帯装備の拡大・充実(省力化を目的として設備能力の増大・装置の自動化、IT化、工程の改善など)その他があります。

生産性向上を刺激する主な賃金制度

  • 目標管理と連動した年俸給
  • 出来高給
  • 時間割増給
  • 昇給―年次昇給・特別昇給(功労・昇進)
  • ベースアップ(賃金テーブル額の総引き上げ)
  • 職務に伴う給与
  • 期末一時金―利益分配、業績配分




24. 会社の賃金制度を変更したいがどのような内容でどの項目を注意したらよいでしょうか。

1. 賃金制度は、賃金の決め方、賃金の構成、体系の総称であり、賃金の決め方にかかわる賃金体系も、賃金制度の1つである。賃金体系の構成要素としては、次の図のようなものがあります。

賃金支払形態は、大きく分けて時間給制と業績給制の2つがあります。さらに、時間給制には、時給制・日給制・週給制・月給制・年俸制があります。

1)時間給制
時間給制は、労働者の能力をあらかじめ測定し、その労働者に対する時間あたりの単価を決定し、一定の労働時間に対しての賃金を計算する方式です。時間給制には、次の種類があります。

  1. 時給制(時間あたりの賃金が定められている賃金制度)です。労使間で、時間あたりの賃金が明確にされており、賃金計算が簡単です。
  2. 日給制(1日あたりの賃金が定められている賃金制度)です。賃金決定の基準としては、職種、経験年数、技能、能率などが総合的に考慮される。
  3. 週給制(1週間あたりの賃金が定められている賃金制度)です。
  4. 月給制(1ヵ月あたりの賃金が定められている賃金制度)です。月給制は、労働者にとっては、安定した賃金形態であり、生活保障面において長所のある賃金制度です。なお、月給制においては、1ヵ月の期間に1日でも労働した場合に月給の総額支給をする完全形と、1ヵ月の期間に労働者の都合で休んだ場合に欠勤控除する形があります。これらの判断は就業規則又は賃金(給与)規程の内容によります。
  5. 年俸制(1ヵ年あたりの賃金が定められている賃金制度)です。最近は、管理職を対象として年俸制の導入又は、導入見込の企業が多く見られます。

賃金体系

25. 労働基準法で平均賃金の規定があるのですが、また、どのような時に利用しますか。

平均賃金(労働基準法12条)は、解雇予告手当、休業手当(使用者の都合により労働者が休業した場合)、年次有給休暇中の賃金、休業補償等の災害補償(業務上の災害により労働者が休んだ時に使用者が支払うべき賃金の補償)、減給の制裁の制限額を算定するときの尺度として平均賃金を用います。

労働基準法では一定の法的規制を行っているのは、労働者の通常の生活をできる限り保障しようという趣旨に基づくものです。
そのために平均賃金は「算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」をいいます。

平均賃金=前3ヶ月間の総賃金額/前3ヶ月間の総日数
● 3ヵ月間の総日数とは、実稼労働日数を指すのではなく、暦日数を指す。
● 3ヵ月間の総賃金額とは、賃金をすべて含みますが、以下の項目のものは除外します。
  1)退職金や病気の見舞金などのような臨時に支払われた賃金
  2)年に2回ないし3回以下の賞与等

26. 役割(職務)給をベースとした役割(職務)等級制度が注目されているようですが、それはどのような内容となってますか。

役割(職務)給とは、役割(職務)の価値をベースとしています。
以下、職能等級制度と役割(職務)等級制の比較表でポイントを整理します。

<比較表>
職能等級制度
-
役割(職務)等級制度
職務遂行能力(保有能力)が基礎となっている
特徴
役割(職務)価値と担当者個々の業務にて評価される。
昇給と昇格により毎年右肩上がりとなる。→人件費の増加となる。
賃金
役割(職務)
ゼネラリスト育成に向いている。人事の異動がしやすい。
メリット
人件費が抑えられ基本的に人件費の増加がない。職能が明確であることからスペシャリストに向いている。
等級基準以下の仕事をしても等級に応じた賃金が支給される。
問題点
高能力・高技術者であっても基準以下の仕事をする場合は仕事に見合った賃金となる。

27. 社員が欠勤、早退のときは賃金カットはできますか。またどのくらいできるでしょうか。

この場合には、ノーワーク・ノーペイつまり労働がなかったときは賃金を支払わないということであり、使用者としては、欠勤などにより仕事をしなかった時間を計算して賃金カットは当然できます。ただ、ノーワーク・ノーペイの原則は、雇用契約から導かれる原則ですから、労使の特約で排除することも可能です。

実務的には、就業規則等の規定に従って行ってください。就業規則の中に、「遅刻あるいは早退3回の場合は、1日分の給料を控除する」と規定があった場合は、懲戒処分としての減給を定めたものと解釈されます。

減給処分は、1つの違反行為については、減給の額が1日の平均賃金の半額を超えてはなりません。いくつかの違反行為があった場合には、その減給額の合計が、1ヵ月の賃金総額の10分の1を超えてはなりません。(労働基準法91条)

28. 時間外手当として、どのようなときに割増賃金を支払うことが必要でしょうか。

1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場の場合は44時間)の法定労働時間を超える時間外労働の場合には、25%以上の率で割増された賃金を支払わなければなりません。

ただし、所定労働時間が1日7時間30分であったとすると、7時間30分を超えて30分以内の(8時間までの)残業であったとするならば、法定内残業ですので、就業規則などに特に定めのない限り、割増賃金(25%以上の率で割増された賃金)の支払い義務は生じません。

また、平成22年4月1日施行の改正労働基準法では、1ヵ月60時間を超える時間外労働の法定割増率の引上げが行われました。これは、中小企業に対しては当面適用猶予となっていますので、改正法のとおり実施するのかしないのかによって、選択することになります。改正法の割増賃金率と、1ヵ月60時間超の時間外労働に対する代替休暇制度等は労使協定事項ですから、協定が締結されれば、賃金に関する絶対的必要記載事項として、就業規則(賃金規程)には、必ず記載しなければなりません。

29. 休日労働をさせた場合に割増賃金を支払わないといけませんか。

1週1日または4週4日という法定内休日に労働した場合は、法定休日労働として、35%以上の率で割増させた賃金を払わなければなりません。ただし、ある企業の休日数が週休2日制で1週間に2日間休日がある場合には、その内1日の休日に労働した場合でも、就業規則などによりどちらが法定休日と特に定めがない限り、法定休日労働としての割増賃金の支払い義務は生じません。(ただし、時間外労働として、25%以上の率で割増された賃金の支払い義務は生じます。)

30. 割増賃金の計算方法を教えて下さい。

1時間当たりの割増賃金の計算式は以下のとおりです。

1. 時間給の場合

  • 1時間当たりの割増賃金額=時間給額×1.25(法定休日労働の場合1.35)

2. 日給の場合

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※注 

  • 所定労働時間とは法定の労働時間ではなく、当該労働者について決められた所定労働時間です。つまり、所定時間が7時間30分である場合には、日額を7時間30分で除します。

3. 月給の場合

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※注1

  • 月によって所定労働時間数が異なるときは、1年間における1ヵ月の平均所定労働時間数

※注2

  • 月給額には、基本給のみならず、諸手当の全部を含みます。ただし、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われる賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除きます。さらに平成11年10月1日以降は、住宅手当についても労働者に一律支給ではなく、就業規則等で支給基準が明確に区分し支給されている場合も除くことができます。

4. 出来高払いの賃金の場合

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※注

  • 賃金が上の計算式で示した賃金の2種類以上の組み合わせで支払われた場合、たとえば、基本給は月給で、他に日額の手当があるような場合には、それぞれの部分について算定した合計額が1時間当たりの割増賃金となります。

31. 労働関係の終了にはどのような種類がありますか。

労働者との労働関係の終了には3種類があります。

1. 労働期間の終了
労働契約である一定の期間を働いてもらうことを決めている場合は、期間が終了したときに契約が終了します。また、期間を定める場合の最長は3年間です。専門的知識等、60歳以上の雇用等は5年間。もちろん更新はできます。しかし、更新した場合は労働契約期間の定めがないのと同じ扱い方となります。

2. 契約で定めた終了
就業規則などで60歳定年制を規定している場合には、労働者が60歳になったときに雇用契約は終了します。
就業規則などで「休職期間が満了しても休職の理由が消滅しない場合には、休職期間の満了をもって退職とする」という規定の場合も終了します。 

3. 労働者の死亡による終了
労働者本人が死亡した場合は、当然終了します。

4. 労働者及び使用者の合意による終了
労働契約は、労使双方の合意によって終了させることができます。

5. 退職による終了
労働者の一方的な意思表示による労働関係の終了をいいます。

6. 解雇による終了
使用者の一方的な意思表示による労働関係の終了をいいます。
※注 退職という用語は、解雇等も含む広い意味で使われることもありますが、通常は上記5のような狭い意味で使用します。

32. 労働基準法には解雇制限があると聞きましたが、それはどのようなときでしょうか。

労働基準法と男女雇用機会均等法上の解雇制限があります。

(1)労働基準法上の制限
1. 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、療養のために休業している期間及びその後30日間は解雇してはなりません。(労働基準法19条)
ただし、療養の開始3年を経過した日において労災保険の傷病補償年金を受けている場合、又は同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合は、解雇することができます。
次の場合は所轄労働基準監督署長の認可を受け、解雇することができます。
A.天災事変(火災、地震、洪水など)により事業の継続ができないとき
B.その他やむをえない事由(天災事変に準ずる不可抗力的事由)

2. 産前産後の休業期間中とその後30日間
女性労働者について、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間は休業させなければならない(労働基準法65条)が、この休業期間中とその後30日間は解雇してはなりません。(労働基準法19条)。

3. 国籍、信条等を理由とする解雇
労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として解雇してはなりません。(労働基準法3条)

4. 監督機関への申告を理由とする解雇
労働者が事業場の労働基準法違反の事実につき、労働基準監督署に申告したことを理由として解雇してはなりません。(労働基準法104条)。

(2)男女雇用機会均等法上の解雇制限

1. 女性であることを理由とする解雇
2. 結婚・妊娠・出産を理由とする解雇

(3)育児・介護休業法による解雇制限
労働者が育児・介護休業の申し出や休業したことを理由に解雇してはなりません。

(4)労働組合法による解雇制限
労働者が労働組合の組合員又は労働組合に加入しようとしたことを理由に解雇してはなりません。

33. 解雇手続を行う際にどのようなことに留意するとよいですか。

解雇手続には、事前に解雇予告が必要となります。

(1)解雇の予告
使用者が労働者を解雇する場合は、解雇の予告をする等一定の手続きを行わなければなりません。つまり、少なくとも解雇の日の30日前に、労働者に対して解雇予告しなければなりません。(ただし、解雇制限があるときはできません)解雇の予告期間は30日ですが使用者が労働者に対して解雇予告手当(平均賃金)を支払うと、支払った日数分だけ予告期間が短くできます。
例えば、20日分の予告手当を支払って予告した場合ですと、残り10日となり、10日後に労働契約が終了することになります。

(2)解雇予告のいらない場合
次の労働者を解雇する場合については、労働基準法上予告が義務づけられていません。

1. 日々雇い入れられる者(ただし、1ヵ月を超えると解雇予告が必要です)
2. 2ヵ月以内の期間を定めて使用される者(同上)
3. 試みの使用期間の者(ただし、14日を超えると解雇予告が必要です)

34. パートタイマー労働者とはどのような働き方をする人をいいますか。

パートタイマー(法律上では「短時間労働者」といいます)とは、「週の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べ短い労働者」と定義しています。さらに、統計調査では目的に応じ、異なった捉え方をしています。

総務庁統計局「労働調査」では、「週の所定就業時間が35時間未満の者」を短時間労働者と定義しています。

35. 改正パート労働法とはどのようなものですか。

少子高齢化、労働人口減少社会で、パート労働者が能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、パートタイム労働法が改正されました。(平成20年4月1日施行)

(1)一定の労働条件について明示が義務化<改正法第6条>
1.労働基準法により労働条件の明示が文書の交付によって義務づけられている事項に加え、一定の事項について、文書の交付等による明示が義務化されました。
→違反の場合は過料(10万円)に処せられます。

(2)待遇の決定に当たって考慮した事項について説明することが義務化<改正法第13条>
雇い入れ後、パート労働者から求められたとき、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化されました。

説明義務が課せられる事項・・・労働条件の明示、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を推進するための措置

(3)均衡のとれた待遇の確保の促進<改正法第8条>
1. 正社員(通常の労働者)と同視すべきパート労働者(正社員と職務の内容や責任)が同じで、人材活用の仕組み(人事異動の有無や範囲)が全雇用期間を通じて同じで、かつ、契約期間が実質的に無期契約となっているパート労働者)のすべての待遇について、パート労働者であることを理由に差別的に取扱うことが禁止されました。

2. 1以外のパート労働者の賃金、教育訓練、福利厚生
【賃金】<改正法第9条>
パート労働者の賃金を決定する際は、正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案することが努力義務化されました。
さらに、正社員と職務と一定期間の人材活用の仕組みが同じ場合は、賃金を正社員と同一の方法で決定することが努力義務化されました。

★対象となる賃金は、基本給、賞与、役付手当等

【教育訓練】<改正法第10条>
正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等に応じてパート労働者の教育訓練を行うことが努力義務化されました。
さらに、正社員と職務が同じ場合は、正社員に行う職務の遂行に必要な教育訓練について、既に必要な能力を有している場合を除き職務が同じパート労働者にも行うことが義務化されました。

【福利厚生】<改正法第11条>
健康を保って働くための施設や業務を円滑に遂行するための福利厚生施設について、パート労働者に利用の機会を提供するよう配慮することが義務化されました。

(4)正社員へ転換推進<改正法第12条>
正社員への転換を推進するための措置が義務化されました。

(講じる措置の例)
★正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパート労働者に周知する。
★正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。
★パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。

(5)苦情処理・紛争解決援助

  1. パート労働者から苦情の申し出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務化されました。<改正法第19条>
  2. 紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、紛争調整委員会による調停が設けられた。<改正法第21、22条>

対象となる苦情・紛争・・・労働条件の明示、待遇に関する説明、待遇の差別的取扱い、職務遂行に必要な教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を推進するための措置

36. パート労働者の採用では、使用者は労働条件を明示することが義務化されましたが、それはどのような内容ですか。

労働条件の明示については、書面によるものとよらないものについて労働基準法第15条、パート労働法第6条により定められているので図により示します。

労基法第15条・パート労働法第6条
明示すべき労働条件
書面交付による明示事項
1. 労働契約の期間に関する事項 ○期間を定めない場合もその旨
2. 就業場所、従事すべき業務に関する事項 ○雇い入れの直後のものでよいが、その後の配転、出向などあればその旨明示してよい
3. 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項 ○所定労働時間を超える労働・休日労働の有無を加える
4. 賃金(6の退職手当、7の賃金を除く)の決定、計算、支払い方法、賃金の締切り、支払の時期、昇給に関する事項 ○初任給の金額、初手当の金額の明示を含む
☆「パート労働法」では昇給の有無も含む
5. 退職・解雇(事由及び手続等)に関する事項 ○雇用契約終了事由の全事項
6. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、退職手当の支払の時期に関する事項 ×
☆ 「パート労働法」では退職手当の有無の明示義務
7. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与・これらに準ずる賃金、最低賃金に関する事項 ×
☆「パート労働法」では賞与の有無の明示義務
8. 労働者に負担させるべき食費、作業用品、その他に関する事項 ×
9. 安全、衛生に関する事項 ×
☆パート労働法では文書等明示の努力義務
10. 職業訓練に関する事項 ×
☆パート労働法では文書等明示の努力義務
11. 災害補償、業務外の疾病扶助に関する事項 ×
12. 表彰、制裁に関する事項 ×
13. 休職に関する事項 ×
☆パート労働法では文書等明示の努力義務
※ 有期雇用の場合の更新の有無、更新の判断基準等の事項 ×
☆パート労働法では文書等明示の努力義務
※ 労働・社会保険の適用に関する事項 -


 ○・・・労基法、職安法上の書面交付明示に該当、×・・・書面明示に不該当、
 ☆・・・パート労働法に基づく雇入れ時の文書交付等の明示。

37. パート労働者の健康保険・厚生年金保険の取扱いはどのようになっていますか。

パート労働者の健康保険・厚生年金保険の取扱いは、勤務時間数と労働日数によって次のとおりです。

  • パート労働者を健康保険・厚生年金保険の被保険者として取扱うかどうかは、その身分関係で一律ではなく、雇用関係の実態に応じて決められます。その一つの目安になるのが常用的雇用関係にあるかどうかで、次にあげる勤務時間と勤務日数の、両方に該当するときに常用的雇用関係が認められ、被保険者とするのが妥当とされています。

1. 勤務時間数

  • 1日の所定労働時間が一般労働者のおおむね4分の3以上であれば、該当します。たとえば、一般労働者の所定労働時間が1日8時間だとすると、6時間以上が該当します。日によって勤務時間が代わる場合は、1週間をならして、所定労働時間のおおよそ4分の3以上の勤務時間があること。

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2. 勤務日数

  • 1ヵ月の勤務日数が、一般労働者の所定労働日数のおおむね4分の3以上であれば該当します。一般労働者の1ヵ月の所定労働日数は、必ずしも実出勤日数をさしていませんが、その事業所で同じような仕事をしている労働者の所定労働日数を確認しておおよそ4分の3以上勤務していれること。

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※以上は、あくまでも一つの目安であり、これに該当しない人でも、就労形態や就労の内容などを総合的に見て、常用的雇用関係が認められれば、被保険者となります。また雇用保険については、1週20時間以上で、31日以上の雇用見込がある場合は被保険者として該当します。

38. パート労働者の雇用期間の終了とはどのような形態がありますか。

雇用(労働)契約では、期間の定めのない契約が通常ですが、雇用(労働)契約を定めているケースも多いようです。次のことを留意して下さい。

1. 雇用(労働)契約の定めがある場合、例えば3月31日までというような契約をした場合には、3月31日をもって雇用(労働)契約期間が終了します。

2. 雇用(労働)契約が4ヵ月契約というような契約期間があったが、期間満了の都度契約の更新が繰返された場合は、期間の定めのない契約と実質的に同じ状態とみなされます。

3. 更新拒否が認められる場合
短時間の雇用(労働)契約をしたパートタイマーについて何回か更新を1年以上した場合に、使用者が突如として更新を拒否することを「雇止め」といいます。雇止めが禁止されるのは、更新の繰返しによって、労働者本人が今後も続いて働けるという期待を保護する必要があるからです。とするならば、更新拒否(雇止め)が許され、使用者として正当な理由なしに契約を終了させるためには、そうした労働者の期待を前もって発生させないように労働者と合意をしておくことが必要です。具体的には、使用者が「今回の更新が最後で、次回からは更新しません」と意思表示し、労働者の同意があれば、雇用契約が終了します。

4. パートタイマー労働者の解雇
期間の定めなく雇用されている場合や、当初は期間の定めがあったが更新が繰返され、実質的に期間の定めのない状態になっている場合には、契約者から一方的に契約を終了されることは解雇と同じ扱いになります。

【解雇の正当な理由】

  • 業務命令違反
  • 勤務態度不良
  • 仕事が少なくなり、正社員だけでまかなえるようになったためパートタイマーの人員整理

5. パートタイマー労働者の解雇予告
使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前に予告するか30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

労働条件通知書のサンプル(PDF)
※ 以上のほかは、当社就業規則による。
※ 短時間労働者の場合、本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条に基づく文書の交付を兼ねるものであること。
※ 登録型派遣労働者に対し、本通知書と就業条件明示書を同時に交付する場合、両者の記載事項のうち一致事項について、一方を省略して差し支えないこと。
(厚生労働省HPより)