就業規則作成・見直しQ&A

就業規則を作成・見直しにあたっては、最近の法律を捉えて、その内容項目を就業規則の条文に入れておくことが必要となるので、労働法関係の改正となった主な法令を説明します。

1.最近の労働基準法の改正はどのような内容か、また、その内容を簡単に教えてください

平成22年4月で、労働基準法が改正になりました。
今回の改正は、長時間労働を是正し労働者の健康を確保し、仕事と生活の調和が取れた社会の実現を目的としています。主な改正内容は以下のようになります。

1.時間外労働の割増賃金率

1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた場合 → 

  • 割増賃金率を50%以上としなければならない。
  • 労使協定により、有給の休暇に代えることが可能

※中小企業は当分の間適用を猶予

限度時間を超えた時間外労働の割増賃金率を25%以上率とするよう努めなければならない(努力義務)

2.年次有給休暇

時間単位年休

  • 労使協定により、年間5日分を上限に時間単位での取得が可能。

法的適用の猶予の範囲(中小事業主)

中小事業主とは次の図のとおりです。また、この場合の中小企業は事業所単位でなく、企業単位で判断します。

 
資本金の額または出資の総額
または
常時使用する労働者
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外 3億円以下 300人以下

2.育児・介護休業法が改正したと聞きましたが、どのような内容ですか。

育児・介護休業法は平成22年6月30日から施行しています。
※下線部は、平成21年6月の法改正により改正された部分。
施行日:原則として平成22年6月30日(但し、4、5、6について常時100人以下の労働者を雇用する企業は平成24年6月30日まで猶予)

1.育児休業制度

労働者(日々雇用される者を除く。以下同じ。)は、その事業主に申し出ることにより、子が1歳に達するまで(両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヵ月に達するまでの1年間)の間(子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合には、子が1歳6ヵ月に達するまで)、育児休業とすることができる。
※育児休業については、次のいずれにも該当する有期契約労働者も対象

  • 1.同一の事業主に引続き雇用された期間が1年以上であること
  • 2.子が1歳に達する日を超えて引続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者を除く)

2.介護休業制度

労働者は、その事業主に申し出ることにより、対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態に至るごとに1回、通算して93日まで、介護休業をすることができる。
※ 介護休業についても育児休業と同様の考え方で有期契約労働者も対象とする。

3.子の看護休暇制度

小学校入学までの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、小学校就学前の子が1人であれば年に5日間、2人以上であれば年10日間まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができる。

4.介護休暇制度

要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日間、2人以上であれば年10日間まで、介護のために、休暇を取得することができる。

5.育児短時間勤務等の措置

事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、育児休業をしていない者について、労働者の申し出に基づく短時間勤務の措置を講じなければならない。
短時間勤務制度、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ繰下げ。

6.所定外労働の免除

事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはならない。

7.時間外労働の制限

事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合は、1ヵ月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない。

8.深夜業の制限

事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合は、深夜(22時~5時)において労働させてはならない。

9.不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が上記1~8の申し出をしたこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

10.転勤についての配慮

事業主は、労働者の転勤については、その育児又は介護の状況に配慮しなければならない。

出所)厚生労働省(改正育児・介護休業法のあらまし P.12)

3.労働契約法とはどのような内容ですか。また、就業規則の作成においてどのような関係がありますか。

労働契約法の主なポイント(平成20年3月施行)

 1. 労働者の安全配慮(5条)
 2. 労働契約を結ぶ場合(6~13条)⇒就業規則を労働者へ周知する
 3. 就業規則の内容変更(8~10条)

  • 原則⇒労使の合意があること
  • 不利益変更⇒合理的であること

  A その変更が、以下の事情等に照らして合理的であること。

  • 労働者が受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉の状況

  B 労働者に変更後の就業規則を周知させること。

 4. 法令及び労働協約と就業規則との関係(13条)

  • 労働契約が就業規則に違反⇒就業規則の定めが基準となります。
  • 就業規則が法令又は労働協約に違反⇒法令は又は労働協約が基準となります。

 5. 解 雇

  • 解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
  • 解雇は、労働者に与える影響が大きく、解雇に関する紛争が増加のため、ルールをあらかじめ明らかにすることにより、解雇に際して発生する紛争を防止する。
  • 権利の濫用として無効となると判示した「日本食塩製造事件最高裁判例」があります。

4.就業規則の点検はどのような方法で行ったらよいでしょうか。

点検の方法としては、総則、人事、服務、労働時間、休憩、休日・休暇、賃金、退職金、表彰・懲戒、安全衛生、災害補償等の順に点検を行います。この時、各項目にチェックリストがあると便利です。
(メールで案内の方(登録)は、就業規則のチェックリストを無料で送ります。)

5.就業規則の作成・変更、手続はどのような流れとなりますか。

下記の内容で行うと良いでしょう。この時の留意点としては、法改正と職場の現状把握等をプロジェクトチームを発足させて行うと良いものができます。
shuugyou1_1.jpg

6.就業規則の作成にあたり絶対記載しなければならない事項はありますか。

就業規則に記載すべき事項には、絶対的必要事項と相対的必要事項と任意的必要事項があります。
就業規則の見直しの際には、各項目を確認のうえ進めるよう注意が必要です。
※就業規則に記載すべき事項(労働基準法89条、92条)

1.必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)

  • 1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇の事項
  • 2. 賃金の決定、計算、支払い方法、締切日及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
  • 3. 退職に関する事項(解雇事由を含む)

2.会社に定めがあれば記載するもの(相対的必要記載事項)

  • 1. 退職手当の定めをする場合の適用社員の範囲、退職手当の決定、支払方法、支払時期に関する事項
  • 2. 臨時の賃金等(退職金を除く)及び最低賃金額に関する事項
  • 3. 社員に食費、作業用品その他を負担させる場合、これに関する事項
  • 4. 安全及び衛生に関する事項
  • 5. 職業訓練に関する事項
  • 6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 7. 表彰及び制裁の種類、程度に関する事項
  • 8. その他、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合

3.改正の効力発生時期

就業規則の効力は、一般社員に周知されたときから発生することになります。


7.就業規則の前文にはどのような効果がありますか、また、適用時期の留意点について教えてください。

前文の効果や適用時期の留意点は、次のとおりです。

(1)前文の機能とは
「前文」は、就業規則制定の趣旨や目的を明記し、社員に充分説明して理解して頂き、社業の円滑運営を期待するものです。また、「前文」の前に経営理念、方針、モットー(スローガン)、社是などを明記する企業もあります。⇒ 規定例資料参照

(2)適用時期の遡及と整備
適用時期は使用者が周知した時または施行日が到来した時になります。

  1. 遡及適用により社員が不利益になる条項については、社員の同意がないと無効になります。(刑罰不遡及の原則)
  2. 遡及適用により社員の利益となる条項は、有効になります。

8.採用時の提出書類と身元保証書について教えて下さい。

採用時には、次の書類を提出して頂くと良いでしょう。

(1)採用時の提出書類

  1. 採用時の提出書類について主なものとしては、「住民票記載事項証明書」の提出によることとされています。(昭50.2.17基発83号)
  2. 正当な理由がないのに書類を提出しない。⇒労働者としての義務違反(不誠実かつ企業に支障を与える行為)

(2)身元保証書

  1. 身元保証契約は、⇒社員の使用者に対する債務不履行、不法行為などから生ずる損害賠償債務を担保する契約です。身元保証する内容を明記し、保証人の署名、捺印をして頂きます。※身元保証人の損害賠償の責任及び金額は、使用者の監督責任、過失の有無や、社員の任務や身上の変化等の事情によりますが・・・7割から2割(重大な交通事故等)の範囲。(横領、窃盗といった犯罪行為の故意によるものは別)
  2. 身元保証契約期間は次のとおりです。

  ・期間を定めていないときは3年間
  ・期間を定めるときは最長5年間
  ・自動更新は無効⇒5年後もさらに継続するときは、新たに身元保証契約を結ぶ必要があります。

9.社員の休職は、どのような点に注意したらよいでしょうか。

休職事由や期間などの規定の他、復職要件等を予め定めておくと良いでしょう。

(1)会社がやむを得ないと認める休職事由について明記する
(2)会社が認める休職期間について明記する。この場合、勤続年数により休職期間を定める場合が多い。
(3)私傷病休職の復職要件について明記する。この場合、休職期間満了時に通常勤務に堪え得る状態に回復しているのに復職を拒否したときは無効となり、当然復職したものとして取扱われます。

《ポイント》-1.休職期間満了による自動退職が有効かについて

ア. 期間満了の翌日等一定の日に雇用契約が自動終了すること
イ. 明白に就業規則に定めて明示していること
ウ. その取扱いについて規則どおりに実施していること

以上について、例外的な運用や裁量がなされていなければ定年と同じように終期の到来による労働契約の終了となり、「雇用の問題は生じない」とされています。
(昭27.7.25 基収162号 通達)

《ポイント》-2.通常勤務可能な程度に回復し、最終判断は、医師の診断を参考に決定

現に就業を命じられた特定の業務についての労務提供が充分にできないとしても、

  1. その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、労働者の配置や異動の実情及び難易度に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、
  2. かつ、その提供を申し出ているならば債務に従って履行の提供があると解する。

(片山組事件 平10.4.9最高裁)となっています。

10.同一事由による再度の休職の取扱いは、どのようにしたら良いでしょうか。

同一事由による再度の休職には、次の点に注意すると良いでしょう。

最近は、医療の進歩等により療養期間が長期化する傾向にあります。この場合は、職場に復帰しても勤務が続けられず再度、同一又は関連する傷病名により休職となる場合がありますので、次のような規定を設けることをお勧めします。

規定 (例)
 (休職の発令)
第○条 
1. 社員が次の各号に該当するときは、休職を発令することができる。
(1) 私傷病による欠勤が暦月2ヵ月を超えたとき
(2) 私傷病による欠勤が2週間以上になる見込みの疾病で、本人が申請したとき
(3) 精神的疾病により勤務に支障があるとき
(4) 刑事事件で逮捕、送検もしくは起訴されたとき(解雇のときを除く)
2. 復職後1年以内に第1項第1号から3号のいずれかの事由で休職する場合で、前回の休職事由が同項第1号から3号のいずれか(同一でない場合を含む)であったときは、前回の休職期間を通算するものとする。この場合、休職の通算期間の限度は1年6ヵ月とする。但し、会社が認めたときは、認める期間を延長することができる。

11.退職に関しての規定では、どのような点に注意が必要ですか。

退職に関する規定は絶対記載事項です。その種類は次のとおりです。

労働関係の終了の態様は、大別して次の3種類です。ただし、「退職」という用語は、解雇等も含む広い意味で使われることもありますが、ここでは便宜上狭い意義で使用します。

  • 1.解 雇
    • 使用者の一方的な意思表示による労働関係の終了
  • 2.退 職
    • 社員の一方的な意思表示による労働関係の終了
  • 3.期間満了等による自動終了
    • 労働契約期間の満了、定年、休職期間の満了、死亡等による労働関係の終了

12.社員の一方的な退職には、どのように対応したらよいでしょうか。

最近は、突然出社しなくなり、電話等で一方的に退職するケースがあります。その場合は、次のように対応したらよいでしょう。

会社の承諾を得ず、無断で一方的に退職した場合も原則として、2週間たつと効力が発生し、有効となります。また、この場合には退職金を支給しなくても良いでしょうか。
《判 例》

1.会社の都合も考えずに退職するときは、仕事に支障をきたすことになるからこれを有効と認めることはすなわち、退職金をもって労働契約の債務不履行について損害賠償に充てることに帰着し、これは労基法16条、24条に反することを是認することになるから、仮に円満退職者以外には支払わない旨の就業規則があったとしても無効である。(栗山製麦事件 昭44.9.26岡山地裁玉島支部判決)
2.退職を申し入れても2週間は勤務義務があるのでこれを怠ることは労働者の義務違反であるから退職金不支給も正当とする。
(大宝タクシー事件 昭57.1.29大阪地裁判決)

上記判例1.については退職金を支給しないことは無効となり、2.は退職金の不支給を有効としています。これは退職時において業務上の支障度合い、事務引継ぎの有無等諸般の事情を考慮してケース・バイ・ケースで判断されることになります。

13.出社せず、連絡も取れない社員には、どのように対処したらよいでしょうか。

行方が確認できないケースは、次のように対応します。

行方不明社員の退職取扱いの整備は、事例によって異なります。

  1. 「社員寮から荷物をまとめて蒸発した」というような場合には、「当該会社で働く意思のないことを態度で表明したものとして黙示の退職の意思表示として取り扱ってよい」(昭23.3.31基発512号)
  2. 単に行方不明の場合は、「無断欠勤などを理由として解雇」としてもその意思表示が相手方に到達しないと効力が発生しません。意思表示の送達のためには、民法第97条2に定める簡易裁判所に公示による送達の申立てが必要です。

《判 例》
1.行方不明期間が30日~60日間程度であれば不合理とはいえず、「病気以外の理由によって欠勤が引き続き60日に及んだ場合」に普通解雇する旨の就業規則の定めに基づいて、米軍戦車の輸送阻止闘争に参加して逮捕され、引続き勾留され起訴された従業員を解雇したケースについて有効とする。
(日本ユニカー事件 昭51.9.13東京高裁判決)
2.自己欠勤が引続き40日に達したときに普通解雇する旨の就業規則の定めに基づき安保反対闘争に参加し逮捕、勾留により欠勤した従業員の解雇が有効とする。
(三菱電機事件 昭49.8.9東京地裁判決)

以上のとおり、判例からみると行方不明期間が30日程度であれば退職とする扱いが有効とされています。

14.定年退職については、どのような点に注意すればよいでしょうか。

改正高年齢者雇用安定法(高年齢者雇用確保措置の実施義務化 平成18.4.1)により、次の点に注意が必要です。

65歳未満の定年の定めをしている事業主は、高年齢者の65歳(経過措置あり)までの安定した雇用を確保するため、1.定年の引上げ、2.継続雇用制度の導入、3.定年の定めの廃止のうち、いずれかの措置を講じなければなりません。(高齢者法9条)
ただし、事業主は労使協定により、2.の継続雇用制度の対象となる高齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、2.の措置を講じたものとみなされます。

規 定(例)
(定年等)
第○条 社員の定年は満60歳とし、定年に達した日の直後給与締切日をもって退職とする。
2.社員が定年後も継続して雇用されることを希望する場合は、全員を退職日の翌日から下記の経過表により嘱託社員として再雇用する。

経過措置期間
再雇用限度年齢
平成22年4月1日~平成25年3月31日
64歳
平成25年4月1日~
65歳

※高年齢者雇用安定法の施行に伴い、継続制度の運用にあたっては、該当労働者への通知の30日前よりさらに半年前に継続雇用について知らせることが望ましい。


15.個人情報等の取扱いについて、社員の退職後についても規定できるでしょうか。

今日、業務上使用する個人情報の取扱いは、企業経営においても重要です。退職後の社員に対して、次のように規定すると良いでしょう。

退職後の営業秘密・個人情報守秘義務と競業防止条項の整備として、営業活動に有用な技術上又は営業上の情報で営業秘密として管理されていて公然と知られていないものやその不正取得・開示・使用等は不正競争防止法により禁じられています。また、個人情報保護法は平成17年4月より民間事業者に対し施行された法律です。個人情報を取得する事業者として様々な義務が課せられています。詳細については、個人情報保護法及びガイドラインを参照してください。

★「不正競争防止法」の改正(平成15年5月)
 ア.民事的救済措置の強化
 イ.ネットワーク化への対応
 ウ.営業秘密の侵害に関する刑事罰の導入

さらに経済産業省から今回の法改正にあわせて三指針が発表されました。
  ・「知的財産の取得・管理指針」
  ・「営業秘密管理指針」
  ・「技術流出防止指針」

また、企業が営業秘密を管理する目的は、以下のとおりです。
  ・会社の重要な知的財産である営業秘密を守ること
  ・会社や社員が思いがけず事件に巻き込まれることがないようにすること(トラブル防止)

1.営業秘密
 「営業秘密の保持」に関する条項を規定する際は、労使当事者間の書面による個別の合意、就業規則又は労働協定による根拠が必要となります。(根拠は不正競争防止法及び「今後の労働契約法制のあり方に対する研究会」の平成17.9の報告書より)
2.個人情報守秘義務
 顧客や社員等の個人情報を適性に管理する体制づくりが必要です。
3.競業避止義務
 社員に退職後において競業避止義務を負わせる場合には、労使間の書面による個別の合意、就業規則又は労働協定による根拠が必要です。合意の要件について、次のとおりとします。
 ア.社員の正当な利益を侵害するものでないこと
 イ.当該義務に反する労働者の具体的な行為が現実に使用者の正当な利益を侵害すること
 ウ.競業避止義務の対象となる業種、職種、期間、地域を明確にすること
  (「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書平成17.8)
※地域の記載においては、会社の規模や業種、職種等により異なります。労働者(社員)の正当な利益を留意して決めることが大切です。

16.労働時間を定めるには、1週間単位のほかに1ヵ月単位で定める方法があると聞きました。どのような仕組でしょうか。

労働時間の制定には1週単位のほかに1ヵ月単位、1年単位等で定める方法があります。

労働基準法では、労働時間は原則として1週40時間、1日8時間と規定されています。(労働基準法第32条)また、変形労働時間制の主なものとして、1ヵ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制があります。

1. 1ヵ月単位の変形労働時間制
就業規則又は労使協定(監督署へ届出必要)により1ヵ月以内の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で定める労働時間制をいいます。
(労働基準法第32条の2)
2.1年単位の変形労働時間制
労使協定(監督署へ届出必要)に次の事項を定めた労働時間制をいいます。(労働基準法第32条の4)

イ. 対象労働者の範囲
ロ. 対象期間(1月を超え、1年以内の一定期間を平均して1週間の所定労働時間を40時間以内とすること)
ハ. 1年当たりの労働日数は、280日以下とすること(3ヵ月を超える変形制)
ニ. 各日、各週の労働時間につき、1日10時間、1週52時間が限度

17.休日はどのような基準で与えなければなりませんか。

休日は1週1日を基本として、労働基準法でその与え方が定められています。次の点に注意すると良いでしょう。

(1)法定休日と会社の定める休日
1.法定休日と会社休日
「休日」とは就業規則、労働契約で定められた労働義務のない日のことであり、「休暇」とは労働の義務のある日に労働を免除する日のことですから、当然その扱いは異なります。「休日」は原則として、毎週少なくとも1回、例外として4週に4日以上与えなければなりません。この休日を「法定休日」といいます。これ以外の、例えば週休2日制の場合の土曜日などは「法定外休日」といいます。つまり、「法定外休日」が「会社休日」ということになります。

<時間外勤務手当>

・法定休日に労働した場合 ⇒ 1時間あたりの賃金の1.35割増
・会社休日(法定外休日)に労働した場合 ⇒ 1時間あたりの賃金の1.25割増

規 定(例)
(休 日)
第○条 休日は次のとおりとする。
(1) 日曜日
(2) 土曜日
(3) 国民の祝日
(4) 年末年始(12月30日~1月3日まで)
(5) その他会社が指定する日

18.休日に出勤させる場合に備えて、どのように規定しておいたらよいですか。

休日出勤させる場合は、時間外協定(36協定)の届出の他、次の点に注意が必要です。

(1)振替休日と代休
1.振替休日
「振替休日」は、所定の休日を予め他の日に変更した場合、当初休日とされていた日は休日ではなく労働日とする制度であり、割増賃金の支払いや36協定の締結は必要としません。
2.代休
一方「代休」は、振替をせずに休日に出勤させた後、任意に休日を与えるものであり、この休日を与えたとしても休日出勤の性質が変わるものではなく、休日労働の割増賃金の支払いや36協定の締結が必要となります。

(2)振替休日の留意点
振替休日を行うためには、以下の要件を満たさなければなりません。(昭63.3.14基発150号)
  ア.振替休日を行うことがあるという定めを就業規則に記載すること
  イ.振替休日を行う休日の前日までに振替によって休日になる日を特定し、社員に周知すること
  ウ.休日の振替を行った場合も法定の休日の要件(1週1日又は4週に4日)を満たすこと

19.休暇にはどのような種類がありますか。

休暇の種類には次のような種類があり、就業規則では絶対的記載事項となっています。

休暇とは、労働日(労働義務のある日)についてその労使義務を免除される日又は時間のことです。この休暇には、法律上労働者に必ず付与しなければならないもの(法定休暇)と就業規則ないし労働協定の定めによって成立するもの(法定外休暇)とがあります。

規 定(例)
(休暇の種類)
第○条 会社の定める休暇・休業の種類は、次のとおりとする。
(1) 年次有給休暇
(2) 特別有給休暇
(3) 生理休暇・産前産後の休業
(4) 育児休業
(5) 介護休業
(6) その他会社が指定した休業

20.育児休業の規定は、どのようなことに留意したらよいでしょうか。

育児・介護休業の規定では、育児・介護休業法について理解し、休業の手続き、給与や賞与等の取扱いについて定めておきましょう。

(1)育児休業・介護休業規則の整備
1.育児・介護休業の取得手続き
 1歳未満(一定の事情がある場合は、1歳2ヶ月又は1歳6ヵ月)の子を養育する社員(男女を問わず)からの育児休業の申出、要介護状態の対象家族について93日を上限に介護休業の複数回取得の申出があった場合は、いつの時点までに申出を必要とするか(育児・介護休業法による申出期限を参考にする)

2.育児・介護休業の申出を拒むことができる社員の範囲は、育児・介護休業法の定めるところによる。また、労使協定において定め(育児・介護休業法第6条)が必要になる範囲があります。

3.育児・介護休業期間中の社会保険料等

  1. 育児休業期間中に社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は、会社が申出をすることによって、被保険者、事業主ともに免除(介護休業については、通常どおり労使の支払が必要です)
  2. 雇用保険より育児休業給付・介護休業給付制度が申出により適用
  3. 休業期間中に賞与が支給される場合は、育児休業による免除期間中は不適用

算定期間中の休業日数を日割計算するなどして、現実に就労していない部分について支給しないことは差支えがありませんが、休業期間、休業日数を超えて支払わない場合は不利益取扱いに該当します。

21.営業手当や役職手当を支給している場合は、時間外勤務手当を支払わなくてもよいのでしょうか。

労働基準法では、所定外労働を超えている場合は時間外勤務手当を支払わなければなりません。ここは誤解があるところです。

・営業手当・役職手当と残業・休日労働との調整的取扱い

労働時間(時間外を含む)の適正管理は、法律で定められています。その中で、営業手当・役職手当と残業・休日労働の関係が課題となっています。それは、労働基準法の解釈と使用者側の認識がずれていることに原因があります。
使用者側は、営業職や役職(管理職)は与えられた業務を遂行することに対して賃金を支給しているとの認識です。
しかし、労働基準法では、適確な労働時間管理を行い、それが割増賃金に該当するならば支払いが必要との考えです。もし、支払わない場合は、未払い賃金となりますので注意が必要です。

22.退職金に関する規定では、どのような点に留意したら良いでしょうか。

退職金規程では、減額・不支給要件について明記しましょう。

  1. 「退職金の減額・不支給」を設ける場合は、退職手当の決定及び計算方法に関する事項に該当するので、就業規則に記載があることが必要です。(昭63.1.基発1号)
  2. 不支給・減額事由については、一般に懲戒解雇処分を受けた者及び懲戒解雇に相当する事由があった者で、不支給・諭旨解雇(退職)制度の活用のため退職金の大幅減額(2~4割の支給)は妥当です。
  3. 自己都合退職の場合には、自己都合退職以外の退職金額の6~8割支給は妥当です。
  4. 支払時期については、就業規則に明記する必要があります。

規 定(例)
 (退職金の不支給)
第○条 次の各号に該当する者については、退職金を支給しない。
    (1)勤続3年未満の者
    (2)就業規則第○条による懲戒解雇の場合
    (3) 社員のうち、課長以上の役職であった者、営業職に従事していた者で
       退職後6ヵ月以内に当社と営業上競合する会社に転職した者及び
       競業する業務を自営する者に対しては、退職金の一部を減額又は返還させる。

23.時間外勤務手当に関する規定の例を教えてほしい。

時間外勤務手当には、時間外勤務割増、休日勤務割増、深夜勤務割増があり、それぞれ労働基準法で割増率が決められています。

・改正労働基準法→1ヵ月60時間を超えるときは50%以上
※ 中小企業は猶予

shomondai14.jpg

24.賞与について記載する場合は、どのような点に留意したら良いでしょうか。

賞与を支給する場合は、支給要件を就業規則に明記する必要があります。その際は、次のことに留意すると良いでしょう。

(1)賞与について経営状況が悪いので支払わないとした場合
この場合、就業規則や労働協約において「支払額が定められていない」こと、「業績によっては支払わないことがある」旨の明記があることが必要となります。

(2)賞与の支払日に在籍していることを支払い条件の一つにする場合は、就業規則に明記があれば可能となります。

(3)賞与の算定基準の一つとして「出勤率90%未満の者には支給しない。」は有効か

  1. 産休や育休の日数分を全て欠勤扱いとすることは「権利の行使を抑制し、労働基準法の趣旨を失わせるもので無効」です。(代々木ゼミナール事件平15.12最高裁)
  2. 支払額について「産休などによる欠勤も減額の対象となり得る」としている規定を設け、合理的な計算方法によるものであれば可能です。

25.安全衛生については、どのような点に留意すれば良いでしょうか。

安全衛生について規定する場合は、次の点に留意すると良いでしょう。

(1)安全衛生
 労働安全衛生法の目的は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動等を促進することです。
 今日、会社には「安全配慮義務」があり、社員の安全衛生法等の法令・規則の遵守、職場環境の維持・継続が求められています。

(2)健康管理
 雇入れ時及び年1回の定期健康診断の実施とその結果は、本人に通知しなければなりません。(安衛法66条、則51条の4)また、健康診断結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません。(安衛法第66条の3)さらに、異常所見がある場合は、必要な実情にあった措置が必要です。(安衛法第66条の5)

26.健康診断と再検査への対応はどのようにすれば良いでしょうか。

社員の健康診断の結果、医師から指導があった場合は再検査を受けさせなければなりません。

・健康診断の受診と再検査の対応
(1)健康診断の受診
 社員の健康診断は単に社員の福祉のみならず、その業務に従事させても良いかどうかを健康上の観点から判断するためでもあるので、業務命令によって受診させなければなりません。

(2)健康診断の結果に基づいて、「特に健康の保持に努める必要があると認めた労働者」に対し、医師や保険師による健康指導を受けるよう努めなければならない。(平成8.9.13基発566号)
  ア.日常生活面での指導
  イ.健康管理に関する情報の提供
  ウ.再検査又は精密検査の受診の勧奨
  エ.医療機関で治療を受けることの勧奨

また、事業者は健康診断の結果、「異常の所見がある」と診断された社員の健康を保持するため必要な措置について、医師等の意見を聞かなければならない。(安衛法第66条の4)具体的には、本人の健康保持のため必要があると認めたときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の削減、その他適切な措置を講じなければなりません。(安衛法第66条の5)

27.過労死・過労自殺予防のための規定を作成するにあたり、どのような点に留意したら良いでしょうか。

過労死の労災認定は、労働基準監督署より基準が示されていますのでその点に留意すると良いでしょう。

・過労死・過労自殺への対応 → 過重労働となっていないか

過重労働による健康障害の防止
一般に、慢性的に長時間労働が続くと、疲労が蓄積され脳や心臓疾患等(過労死)を発症する危険が高まると考えられています。平成14年2月に制定された厚生労働省の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」では、「時間外労働の削減等の労働時間に関すること」、「健康診断の実施や産業医による助言・指導等の労働者の健康管理に関する観点」との両面から過労死等を未然に防ぐために事業者が講ずべき措置が示されています。

労働時間評価の目安と脳・心臓疾患発症の因果関係

時間外労働
関連性の度合い
月100時間を超えると
業務と発症の関連性が強い
発症前2~6ヵ月間に1ヵ月当たり80時間を超えると
業務と発症の関連性が強い
発症前1~6ヵ月間に1ヵ月当たり45時間を超えると
時間外労働が長くなるほど業務と発症との関連性が強まる
発症前1~6ヵ月間に1ヵ月当たり45時間以内なら
業務と発症の関連性が弱い



28.いじめ・パワーハラスメント予防のための規定をするには、どのようなことに留意したらよいでしょうか。

昨今、パワハラ問題がクローズアップされています。職場において、次の定義について留意すると良いでしょう。

(1)「いじめ」「パワーハラスメント」については、次のことに注意して就業規則に定義する。

「パワハラ」とは?
「パワハラ」は、「パワー・ハラスメント」の略語であり、(株)クオレ・シー・キューブ代表岡田康子氏らが考えた造語であり、2002年秋、マスコミ等で取り上げられるようになってからわが国で急速に広がった和製英語である。岡田氏の説明によると、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範囲を超えて、継続的に人権と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く「環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること。この中で重要なのは『本来の業務の範疇を超えて』『継続的』『働く環境の悪化、雇用不安』という言葉です」とあります。(岡田康子「許すな!パワー・ハラスメント」19項)。

(2)「いじめ」「パワーハラスメント」の対応 
職場いじめ・パワハラのプロセス

段階1
「不和」の段階・・・・・・従業員間に仕事上の意思疎通などに関してさまざまな意見の衝突が発生する段階であり、職場いじめに発展する可能性があり、いわば潜在的な職場いじめの段階といえる。
段階2
「攻撃的行為」の段階・・・・・・従業員間にさまざまな攻撃的な加害行為が発生する段階であり、いじめの多くがこの段階で発生することになる。
段階3
管理者層が「加担」する段階・・・・・・従業員間のいじめに関し管理者層が巻き込まれるようになり、しかも管理者層はこれらの被害を放置したり、加害者のいじめ行為に加担したりして、被害が一層拡大深刻化することになる。
段階4
被害者に対する「烙印」の段階・・・・・・被害者は、今や、「気難しい人」あるいは精神疾患にかかっている人との「烙印」を押されて、精神的に追い込まれ、やがて被害者を次の段階へと追い込むことになる。
段階5
組織からの「排除」の段階・・・・・・被害者は自主退職もしくは無断欠勤等を理由として解雇され、組織から排除されることになる。被害者が受けた精神的ショックは、さらに心的外傷後ストレス症(PTSD)を引き起こす引き金となり、退職後も精神的苦痛とさらに伴う精神的疾患は継続し、しばしばより増悪していくこともある。また職場秩序が乱れて会社の信用名誉が損われることもあるだろう。

出所:水谷英夫著「職場のいじめ・パワハラと法対策」 民事法研究会


29.いじめ・パワーハラスメントについて、使用者に法的責任はあるのでしょうか。

使用者側にも裁判例では、法的責任が課せられています。

  • 職場のいじめ・パワハラの法的責任
  • 職場においていじめ、パワハラ等が行われ、それが社会的にみて相当性を欠くだけでなく、法的にみても違法不当な行為と評価される場合は、刑事、民事等の法的責任が問題になります。

 【PTSDが裁判で認められた事例】

PTSD(Post‐traumatic stress disorder)「心的外傷後ストレス傷害」

被告人(女性)の交際相手の男性が以前交際していた女性(被害者)にまだ思いを寄せているものと思い込み、約3年半にわたり、数日おき、ないし連日女性被害者の居住先やその実家に合計1万回以上、無言もしくは「死ね」などのいやがらせ電話をかけ続けて、被害者にPTSDの傷害を負わせた例があります。(富山地裁 平13.4.19判タ 1081号291項)

30.懲戒の種類とその規定例にはどのようなものがありますか。

懲戒の種類とその規定例はどうしたら良いでしょうか。

(1)懲戒の種類
懲戒とは、社員の企業秩序違反や不正をはたらいたことに対し、使用者が制裁を与える処分をいいます。

shomondai15.jpg

2 会社が懲戒の事由等を書面で従業員に通知する。

(1)懲戒の事由
1.就業規則の絶対的必要記載事項に「解雇の事由」を含めることになりましたが、懲戒解雇については、その事由を限定列挙する必要があり、明示がなければ懲戒することができないことになります。また、平成16年の労基法の改正では、社員を解雇する場合、解雇予告の日から当該解雇による退職の日までに、解雇を予告された社員から解雇の理由を記載した証明書の交付を請求された場合は、遅滞なく、当該解雇の理由を記載した証明書の交付をしなければならないこととなりました(労基法22条2項)。なお、解雇後についても同様となります。

2.解雇については以下の条文が追加されています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法第16条)

shomondai16.jpg

31.社員を表彰する場合の規定は、どのような点に留意したら良いでしょうか。

表彰規定は、次の点に留意したら良いでしょう。

表彰は、優良な社員を賞賛して当人を激励するとともに、他の社員には、これに見習うように勧めるものであり、多くの企業がこの表彰制度を取り入れている。
表彰も労務管理の一手段ですが労働条件の一つでもありますので、表彰を行う場合は、労働基準法第89条第9号の「表彰及び懲戒の種類及び程度に関する事項」に基づき、表彰の種類、内容、基準、手続きなどについて具体的に記載しなければなりません。(労働基準法第89条第9号 )


32.最新の法律法の改正に対応した就業規則の作成・見直しについてはどのような項目に留意したら良いでしょうか。

留意する項目としては、次のとおりです。

(1)改正労働基準法とその対応
(2)育児・介護休業法等とその対応
(3)労働契約法とその対応
(4)就業規則の作成・変更手続
(5)自社就業規則の各項目別の確認
(6)その他